お葬式とお墓の合理化?
近年、「墓じまい」という言葉を耳にする機会が増えました。
ちょっと調べてみたところによると、実際、厚生労働省の「衛生行政報告例」での報告では、2018年には改葬件数が10万件を超え、年々その数は増加傾向にあるようです。
背景には、少子化や核家族化、都市部への人口集中によって「お墓を継ぐ人がいない」「遠くてお参りに行けない」という現実的な問題があります。
従来の「家のお墓を守る」という価値観が変わりつつある
樹木葬や海洋散骨、合同慰霊塔など、新しい供養のスタイルが広がっています。特に都市部では「直葬」や「火葬式(通夜も告別式も行わない形)」を選ぶ人も多く、ライフスタイルに合わせた柔軟な選択が主流になってきました。
私自身も、わが家の菩提寺にある集合慰霊塔(合同墓)に入ることに決めました。お寺の境内、本堂の伽藍の前にあり、日々お経もあがる、穏やかな場所です。
最近は、先祖代々のお墓を処分し、遺骨をこちらへ移すご家庭も増えているそうです。
ペット供養が増え、ペットの傍でという希望が増えた
菩提寺には、合同慰霊塔のすぐ隣には、ペット専用の慰霊塔があります。住職の奥様曰く「私たちもすぐ横に住んでいますし、人もワンちゃん、猫ちゃんも一緒のほうが、きっと寂しくないと思って」とのこと。
実際、「家族同然だったペットも近くで眠らせたい」という希望が多く寄せられ、数年前に新たに設置されたそうです。
「墓じまいは増えるけれど、ペットのお墓は増えている。不思議というか、なんだか複雑な気持ちにもなります」と、住職は少し笑いながら話してくれました。

新たな主流になりつつあるのか、合理的な葬儀
もう一つ印象的だったのが、「最近は海洋散骨も増え、船に乗ってお経をあげる機会もあるんですよ」と語ってくれたこと。初めてのときは小型船に酔ってしまったと、こちらも苦笑いされていました。
さらに、地方であっても孤独死は珍しくなくなり、家族から「費用だけ送るのでお願いします」と頼まれ、お寺で読経し、火葬後に先祖代々のお墓に納めたという事例もあったそうです。
私は昭和世代なので、どうしても「お墓=家族の証」という思いが強く、こうした合理的な流れには少し寂しさも感じます。
でも、その一方で、
今の時代を生きる人たちは、本当にギリギリのところで頑張っている。
そう思うと、「命の終わり方」もまた、それぞれの事情と尊厳を反映した一つの選択なのだと感じます。
これから10年、30年、50年後——私たちはどんなふうに“命”と向き合っているのでしょうか。
それは人間らしいものなのか、あるいはまったく新しい価値観の中で形作られていくのか。
はっきりとは分かりませんが、せめて、「忘れられない命」であってほしいと、そう願っています。





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