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刺繍と刺し子を重ねた「祈りの布」――命を思いながら縫う時間

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ライフワークのように続けている刺繍と刺し子の布があります。


さらしに模様を刺して、裏には使い込んだタオルを縫い合わせたもの。

もともとこのタオルたちは、新しいものではなく、

もう雑巾にするか捨てるかというほど使い込まれたものです。

そんな布に、また命を吹き込むように針を刺していきます。

模様は、特に決まった図案はありません。

パソコンで小説を打つように、針を持つと自然に頭の中に物語が浮かびます。

それを布に描いていく。

だから、出来上がった絵柄はどこかまとまりがなくて、

ひとつのテーマに収まらないように見えます。

しかし、どの形にも、どの色にも、私なりの意味があります。

たとえば、1枚目の中の小さな四角い色たちは人間を表しています。

いろいろな色の、いろいろな形の命。

人生の形や縁、出会い、別れ。それらを思いながら、ひと針ずつ縫っています。

言葉にして説明すると、きっと「変わった人」と思われるかもしれません。

でも、これは私にとっての比喩であり、祈りのかたちです。

この一枚目の布は、自宅で使っているものです。

二枚目はお寺に持っていく布。

お寺では本堂のお掃除や、洗面台まわりの水はねを拭く布巾として使ってもらっています。

ひと針、ひと針が、娘や、これまで出会って、そして散っていった命たちへの鎮魂と祈りの供養です。頭に浮かんだものを連想して、それぞれの、かつての命たちを思い出しながら祈りつつ感謝を込めて刺しています。私にとって写仏であり、写経のようなものでもあります。

布巾として使われていくことで、祈りが日常に混ざっていくような気がして、それが嬉しいのです。15年近く続けてきました。

上手ではないけれど、上手である必要もないと思っています。図案も美しいわけではないけれど、自分の中に浮かんだイメージをそのまま形にすることが大事。

三枚目の布は、今、刺している途中のものです。

最近は眼精疲労もあって、なかなか進まなくなりましたが、

年末までにはお寺に持っていく予定です。

私にとってこの時間は、写仏であり、写経でもあります。

針を動かすたびに、心がおだやかになっていく。

形になっていく過程が、供養であり、自分自身の癒しにもなっている時間です。

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